01Blog / NOKIAのブリッジプログラム

2016.05.01

NOKIAのブリッジプログラムはAppleやGoogleの攻勢で当時携帯電話市場で世界を席巻(Max 40%シェア)したNOKIAが携帯事業で苦境に陥り、Microsoftに事業売却し、その雇用問題に対して対策したものです。

実は私自身がこの流れの影響をもろに被り(NOKIAではありませんが、大きなハードウエアからソフトウエアへの価値の変遷)、キャリアを大幅に変更したきっかけの感慨深い想い出です。携帯電話は非常に台数が多いです。その中でトップシェアのNOKIAでまさか・・・人生の中で二度目の大幅な変化を見ました(一回目は日本におけるバブル崩壊の余波)。

なので、私は良い意味で未来を信じません。悲観するという意味ではなく、どのように上手く行っている産業(会社)でも必ず未来は不確定ということです。

つまり、多くの会社が十分な変化を自力では行えず、しかし、大胆に変化しなければ生き残れないということです。

ものづくりだけでは未来は厳しいものとなる

もちろん、真実は違うかも知れませんが、NOKIAの退職者に聞いたところ、結果的に「ものづくり」から離れられなかったと。「ものづくり」が悪いわけではありません。問題はその盲信なんです。Appleも思いっきりものづくりしてますが(EMSだとしても物で儲けている)、プラットフォーマーとしてハードウエアの価値を確保しています。「人」・・と言うよりはきっと「組織」は過去の成功体験を捨てられないのです(コミュニティの罠

残念なことに多くの日系企業で「ものづくり」という言葉を聞きます。「ものづくり」そのものは否定しないですが「それだけでは足りない」という事です。つまり、ものづくりを極めて行けばきっとなんとかなるというふうに聞こえるのです。これはどうなのでしょうか?NOKIAは素晴らしい会社だと思います。実際に優秀な方も多かったと思います。残念ながらこのままではNOKIAの携帯事業のような状態は多くの企業で避けられないでしょう。

しかし、個人的には新しい起業国家の幕開けであるとも思っております。

NOKIAのブリッジプログラムとは

このプログラムはハーバードのケースにも取り上げられております。文末にプレゼンを載せておきました。18,000人がプログラムに参加し、1000個の新しい会社が生まれ、その内、400個がFinland内(NOKIAのHQはフィンランド)という結果です。1000社の約40%がICT Startup、20%がコンサルなどの専門職、40%がその他です。

このプログラムは大きくわけて、下記の6つのカテゴリーに分かれます。ここでは「起業」において少し深掘りしてみます。

「NOKIA内での別の仕事の確保」「NOKIA外での仕事」「起業」「新しい事を習って再就職」「別の方向(例:途上国支援)」

さて、起業へのインパクトはここにデーターがあります。Fig2では43%が実は自分で事業を起したくて機会が来たと言っております。多分、日本でもこういう人は多いでしょう。起業の理由に部署の転属を始めとして、会社における「転機」は影響すると思います。NOKIAでは平均して最初に15,000-20,000ぐらいのお金を支援しているようですね。ファイナンスのサポートが良いという話もありますが、個別のコーチングがソフト面では役にたったようです。

NOKIAブリッジプログラムのコンテンツ

詳細は別途まとめるとしても下記のようなイメージです。外部と協力して、教育プログラムを一回実施して、プランを構築(場合により、元々やっていた事業でSpin Off)、その他、必要な支援を実施したというところです。先のEUのレポートでは85%がブリッジプログラムに満足しているということなので、結構効果的であったと思われます。日本でも今後、特に大手企業の社内人材を起業させるプログラムが非常に盛んになるでしょう。

  • 起業することの承諾と保証
  • 潜在的起業家に対して、関係する団体(アクセラレーターなど)とBoot Camp実施やHelp Deskの設置(上記ではHelp Deskはそこまで効果的ではなかったようですが)
  • 社内の技術やアイデアを持って、チームによるSpin OffもOK
  • Technopolis(インキュベーション施設)やInnovation Mill(アクセラレーター)と協力
  • NOKIA自体が事業化を支援、かつ、共同出資者やその他のパートナーとのネットワーキング機会を提供


Eettiset yt:t – voiko niitä käydä?: Pekka Pesonen: Nokia Bridge Program from Tieturi Oy

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