01Blog / 国際ベンチャー支援者コミュニティで感じた世界と日本のベンチャー支援の違い

2016.10.08

2016年10月初頭にUSのDenverでGlobal Accelerator Networkの年次回があり、世界のMentor主導型アクセラレーターの関係者が集まるので、01Boosterからも参加してきました。コンテンツ自体は秘匿なのですが、各国の方とフリーでお話をさせて頂いた中から「起業活性化・ベンチャー支援」という文脈で感じたことをまとめておきます。

どこも基本的な状況と方法論は変わらない

色んな国の人やUSの州の人にネットワーキングなどの機会に各国や各州での状況を聞きました。簡単に言うと、進んでいる地域は・・・

  • 起業する人が多く、スケールビジネスを目指す人が多い
  • 国際ビジネスを目指す人が多い
  • エコシステムがある(起業家・投資家・メンター:支援者側)
  • 男性に加え、女性にもスケールビジネスを目指す思想が浸透しており、創業者に男女が混ざる(←その方がパフォーマンスが高い)
  • 学生で起業に向かう事を好む人が多い(その方が有利という認識がある)
  • 企業を辞めて起業に向かう事にポジティブ(その方が有利という認識がある)
  • 大企業がベンチャーとの連携をしている(エコシステムの一員である)

という特徴があります。進んでいない地域はこの逆だと思えばいいでしょう。簡単にいえば、進んでいない地域はエコシステムができていないし(難しい!と嘆いている)、起業すれどもファミリービジネス(個人事業主系)か国内を見てしまうという感じです。例えば、シリコンバレーなどは全てが上記のようでしょうし、アイオワは近づいてきた、米国でもまだまだの州も多い。Swedenなんかはまぁ、できてきたかなー?韓国は日本よりも少しベターという感じです。南米ではまだまだみたいな国も。

では、どうやって、それを啓蒙したのか?とアイオワとハワイの代表が女性だったので、その支援者にも色々聞きました。やっていることは同じです。

  • ロールモデル(チャンピオン)を創る
  • ひたすら啓蒙する(スケール型・国際化など)
  • 小さな成功を積み上げる
  • これらを3年ぐらい続けると、兆しが見えてくる

など、何もかもがある意味「当たり前」のことですね。銀の弾(特効薬)は無く、銅の弾を撃ちまくるという感じです。それぞれに国の政策とか色々あるんでしょうが、大きくはそうです。また、Skypeなどの成功例がでると「自分たちもできるのでは?」という形で起業家が増える特徴もあります(Swedenの例)。

イノベーションのジレンマはどこにも存在するが「差はある」

持続的なイノベーションはできるが破壊的なイノベーションは困難という「イノベーションのジレンマ」はどこにでも存在するということです。結局のところ、雇用が相当流動する米国ですら大手企業とベンチャー企業の連携は難しいということですね。程度の差はあると思いますが「難しい」という事は同じだということです。

但し、差はあります。雇用流動性の差です。大企業の人間もいるのです。このような集まりに一緒に(日本でもいますが「参加の質」が違う気がします)

一方で、文化的差異もある

では、全部、同じか?というと同じ部分と違う部分があります。ネットワーキングで南米チーム、アジアチーム、英語圏(旧ブリテン圏)でまとまるのが面白い。

まぁ、確かにそうだけどさぁ、韓国ではそうはいかんのよ。そうそう!日本でも同じ!

という会話です。人間同士のコミュニケーションの手段はローカル性がありますね。これ以外にも細かく違います。つまり、いわゆる起業の世界では標準的な「旧ブリテン圏」のやり方は万能ではないということですね。

同じ部分と違う部分があるということです。

大学との関係が深い

これは正直、日本との圧倒的な温度差を感じました。別に日本の大学が駄目といいたいわけではなく、大学教授が混じっているんですよね。つまり彼らは「言語化」の役割を演じます。

アクセラレーターは「実務家」です。実務には長けているので具体的ですが、総括した「言語化」は難しい。例えば、起業の個々の考え方は実務のアクセラレーターが上でしょう。しかし、それを鳥瞰図的にMECEに定義づける、深めるのはアカデミアの出番です。確かに総括するとそうだなぁと思いました。

支援者は自身も起業経験者が多い

そもそも、ベンチャー支援というかアクセラレーターやインキュベーターは平時の兵士という感じですね。起業は過去、これをして、売ったけど、今は、これやっているっていう人がベンチャー支援者に多いです。次は何やるの?あー?みたいな感じです。

抽象的な概念の大切さ

これも日本の弱いところですね。例えば「ダイエットは健康に良い・正しい!」と結論がそもそもあって、それに対して「どうやってダイエットをするか?」という手段を考えるのが日本では多いのではないでしょうか。一方「旧ブリテン圏」では「そもそも健康とは何か?」とか「ダイエットをしないとならないのか?」「そもそも健康である必要があるのか?」という根本の概念を話し合うのが凄いなぁと思いました。議論の内容が格別にノウハウが入っているとかではないんです。「議論することが重要」なんです。トッププレーヤー同士が、意見を言い合うという行為、後述しますが「コミュニティ」なんです重要なのは。まさに、そうなのか!?と今更気づいた自分は鳥肌が立ちました。

共通の目的を持つ多様なソサイアティー

目的は「より良いアクセラレーター活動」だったり「事業創造」です。そのような大きな目的の中で、大企業・ベンチャー企業・支援者・大学が皆で話し合うのです。しかも民間主導で。これは本当に素晴らしい。まさにダイバーシティ・ラリーです。

コミュニティへの投資

結局、ここなんです。コミュニティ(人の集まり)というのはなんとも抽象的です。これも日本が重要性を意識する上で、弱いところでしょう。Communityの意味を今一度Wikiで観てみましょう。

A community is commonly considered a social unit (a group of people) who share something in common, such as norms, values, identity...

ということですね。同じような考え方や価値観、アイデンティティをシェアする集団。ですかね。

ずばり「コミュニティこそ価値」なんです。極端にいえば「金額的にも価値がある」ということだと思います。例えば、イノベーターが1名いたとします。では、イノベーターが3名いて協力しあったらどうでしょうか?3倍でしょうか?違いますね。3倍以上になるでしょう。

活性化すれば、自発的に価値を自分たちで生み出す集団

世界的に経済が停滞する中、イノベーターしか価値を産みません。となると、イノベーターのコミュニティの意味はなんでしょうか? 何か「特別な情報が得られる」「教えてもらえる」という受け身ではなく、コミュニティさえ活性化してあれば、能動的に勝手にその「コミュニティ」の価値を上げていくのです。

では、日本では何が足りないのか

上記を元にまとめてみましょう。

  • 概念的なディスカッション、ビジョン、世界観を広げる必要がある
  • 絶対に閉じない!多様性が必要、世界トップの知見を入れることが必要(クローズドコミュニティからオープンコミュニティへ)
  • 正しい「ロールモデル」を創って、スケール型のビジネスの啓蒙を3年以上で、最低10年続けること
  • コミュニティの価値を再認識する
  • 正しいマインドセットをインプットする
  • 大学の役割を見直す
  • エコシステムという考え方をより持ち、大企業もそのゲームの一員となる

そんなところでしょうか。いずれにしろ、この「スタートアップエコシステム・スタートアップ支援」我々は先進国では後ろから数えた方が早い気がします。是非、その認識を持ち、銀の弾ではなく、当たり前の銅の弾を打ち続ける努力を続けていく必要があります。その先にしか我々の未来は無いのですから。


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