01Blog / 実験・研究とスタートアップは似ている

2017.01.18

ポール・グレアムのブログに「スタートアップは研究者のようなもので、多くは何も発見できないが、一部は相対性理論のような大発見をする」というような記載があります。これはなかなかに共感できました。

実験を思い出してみる

自分の大学院の頃は実験系の物性の研究室におりました。条件を変え、やり方を変え、物を創り評価する。具体的には結晶の気相合成(何がしかのガスを混ぜて高熱やプラズマで分解し、基板の上に結晶を合成する)を行いました。人によって色々やり方はあるでしょうが、少なくとも最初からその実験(狙ったものができる)の成果が出ることはなく、温度やら、距離やら様々な条件を変えて適当な結果を、更に結果が出てもより良い条件や、何が決定要因になるかの実験を繰り返します。

何度も味わう「どんでん返し」

ある、結論を出して、それを論理的に説明して体系化する作業を延々と続けるわけですが、何回もあるのがどんでん返しです。これは正しいはずだ!と思って、それを実証する実験を行うんですが、結果に一喜一憂するわけです。例えば・・

  • 理論的にはこういう原子の結合状態となりとても硬度が硬いはずだ→全然柔らかい
  • この不純物が混じって電子を出すので、絶縁体なのに導通が→内部に混じっていることを確認→やった!→結果的に別結果 
  • ・・・などなど

細かいことを言いたいわけではなく、こういうはずだ!と思って追加実験をすると違う、合っている結果が出ても他の実験が否定的な結果が出るという具合です。こうなると、

  • そもそも、温度がちゃんと測れているのか?(温度計が狂っているかも?)
  • 実は導入するガスが入っていないのではないか?
  • ・・・などなど

根本的なことから如何に疑うかになります。当然、今詰めてやってますから、一回の否定的な結果に絶望したりするわけです。でも・・・

「自然は間違えない」ので「間違えるのは人間」です。

これは自然科学の世界ですね(間違わない)。一方、起業で扱うのは社会科学(人の主観で原因がずれる)ものですので、運やら、たまたまこの人に会ったとか、新聞にたまたま取り上げられたとかの要素を含め、様々な条件で結果が左右するわけです。

スタートアップは実験に似ている

ここまで来て思ったのはスタートアップはこの研究者の行為に似ているということです。まずはこうだろう?という仮説があります。しかし、仮説どおりには動かない(売れない)。その原因を探ります。で、次の手を打つ。そうすると、予想だにしない結果が現れます。これがたまたまなのか、真実なのかが分からない。過去の経験は助けにはなりますが、ノイズにもなります。何故なら、現在の常識を破壊するところに大きな事業があるからです。最初に地動説を唱えたガリレオ・ガリレイはどうだったでしょうか。時に命を賭けるレベルの否定に合うわけです。スタートアップの世界もそうでしょう。自分が仮に社会科学の答え(ビジネス上のゼロイチ)に近づいても周りが全力で否定するわけです。

創業者は孤高の研究者であり、冒険家である

実験でもあるのは最初いい感じで成功する(成功したと見える)とそれに向けて様々な条件を最適化します。そうすると、後々どんでん返しです。積上げたものはなんだったのか?と唸るわけです。この挫折がより、結果を出すことに慎重さを出します(より根本を考える原動力になる)。そして、たまたま何かの機会に行った実験結果が大発見となるわけです。でも、これは偶然という名の必然ではないでしょうか(プランドハプンスタンスの一種)。

これは起業でも同じではないでしょうか。最初に成功すると大きな問題が後で起こる(おおよそ正値ではない)。一方、様々な失敗の向こう側に偶然という名の必然の「イチ」が見える。

ビジョンという名の元の探究心に突き動かされた起業家は孤高な研究者であり、冒険家であるかも知れません。それに一度魅せられてしまった人は止まることを忘れてしまうのではないでしょうか。

・・・