【01Blog】企業がStartupとの付き合いで気をつけること(3)「社内調整と能力開発」

2013.11.08

先日、有名大学のビジネススクールでパネリストでお話させていただいた折に、どのように新規事業を創るかという形の話で、範囲の経済の話が出た。範囲の経済は素晴らしい考え方であるが、実際の企業で新規事業を開発する場合は、市場がどうか?というよりは、以降の自分のポジションとかマネージャー陣、経営陣との関係とかそういったことが意思決定に大きな影響を及ぼす場合の方が多いのではないか?と思われる。また、何か新しいことをやる時はそういう人材を引っ張ってくるStartupやそもそも関係部署など存在しないので、社内調整というものにはStartupでは無縁な場合も多い。一方、企業では新規事業を実施する上で社内調整が多分に大きな割合を占めることもあるであろう。私は社内調整も立派な能力だと思うのであるが、過去に転職の面接の結果で、「大企業の調整役」と揶揄されたこともあるので、なかなかこの言葉をポジティブなイメージで捉えにくい。また、頑張って(誠意を持って)社内調整した人の評価がそこまで高くなく、どちらかというと買収をぶちあげたりする人の評価が企業では高くなることもよく聞く。いっそのこと、社内調整することの人事評価軸を高くしたら新規事業は活発になるのではないか?と思うぐらいである。 さて、もちろん、企業の方も優秀であるが、能力開発という観点であるとStartupというのは有効に思える。短期間(お金もなくなるので)でビジネスをどう回すか?を必死で考えるわけで、自分で自らビジネスモデルを(企業に比べると社内力学よりも市場力学に応じて)延々と悩み、実行することは能力開発の面では非常に有効であると思える。 残念ながら、日本はそこまで人材が流動しない。一方、シンガポールなどは、行政、民間、大学など、人がどんどん流動する。この前まで、テックメディアで働いていた人が、政府機関で働いていたりする。これはこれでもちろん必ずしも良いことばかりではないかもしれないが、これらの団体のレベル合わせをする上では有効であろう。 私が思うに日本はまだまだ大企業に優秀な人材が多数存在していると思う。特に市場が伸びない中ではポジションも限られるので、本来はもっともっと大きな仕事をできる能力をお持ちの方が比較的小さな仕事をされていたり、中小企業の社長ぐらいはできそうなミドルマネージメント層も企業に沢山いそうである。 前に、Google Voiceの担当者がスピンオフして、Google Voiceの機能を改善するためのStartupを創り、またGoogleに戻るような(投資を受けている)方のプレゼンを米国で聞いたことがある。日本の人材が流動的ではないとはいえ、原則的には流通可能であると思う。問題はStartupに出てしまうと元に戻れないのでは?ということである。一般的に、リスクを取った分、失敗したとしても能力は結構開発できると思う。仮にその後の就職がある程度保証されているのであれば、能力開発の観点で企業の方にもStartupは活用できるのは?と思えなくもない。スピンオフして、新規事業を立ち上げて元の会社に(多分、Promotionした形で)戻る。こんなサイクルができると日本も良くなっていくのかも知れない。

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