【01Blog】ハッカソン/アイディアソンの本質(ベンチャー企業編)

2014.09.09

ハッカソン/アイディアソンの本質について、俯瞰編と大企業編をUPしましたが、多くの方から「ベンチャー企業にとって、大企業主催の●●●●ソンに参加するのは、何のメリットがあるの?」という問いかけが寄せられていますので、現時点で、自分なりの考えを備忘録として残しておきたいと思います。 (あくまでも●●●●ソンは大企業×ベンチャー企業オープンイノベーションのツールに過ぎませんので、大企業×ベンチャー企業によるオープンイノベーション全般に言及します。) まずは直球で勝負です。 大企業によるベンチャー企業からの搾取構造(大企業に上手く使われる関係)になりかねない危険性を孕んでいます(特に気をつけなければいけないのが、大企業側に搾取しているという認識があまりないところです。)。大企業は自社本業のオペレーションに最適化された組織になっており、特に失われた20年で事業開発人材は社内にいなくなっています。自社で新規事業を産めないので、市場への感度が高い社外のベンチャー企業にリスクをとってもらい、スピード感を持って、かつコストを制限して、新規事業開発活動ができることを期待しています。そのような動機がなければベンチャー企業を巻き込むインセンティブはないのです。 ゆえに、大企業とベンチャー企業のオープンイノベーション活動は普通にやれば大企業優位に進みがちなので、両者がWIN-WINになるような緻密かつ丁寧な座組みが必要となります。その座組みの大前提は両者の間に入るコーディネーター(触媒)が必ず必要となることです。それは経済産業省の委託調査「大企業とベンチャーがWIN-WINの発展を実現するためのベストプラクティス事例集」にも以下の通り指摘されています。 『社外のベンチャー企業に対する目利き機能を持つことで、社内では得難いアイディアやビジネスシ-ズを社外から調達することが可能である。ベンチャー企業と大企業の関係は、大企業に有利な条件になりがちであるため、調整役を介在させることで対等な関係での事業開発をすることが可能である。』 (http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/innovation_policy/pdf/best_practice.pdf) 米国で大企業とスタートアップの繋ぎ役として機能しているTechstarsのモデルがコーディネーターの必要性についての参考になります。 さて、適切なコーディネーターが存在するということを条件にベンチャー企業として、どんなメリットを期待できるでしょうか。自社だけでは絶対得ることができない以下を入手できることです。 ①大企業のもつ企業&人的ネットワーク、資産の活用 調達先や販路、物流網等大企業の持つネットワークはベンチャー企業では一朝一夕では獲得できず、それらを活用できると戦略上の可能性は相当広がります。また、社内外の専門家がメンタリングやアドバイスしてくれると相当な有意義になります。 ②大企業のもつブランド、信用力の活用 日本の市場は会社名だけで評価されることが多く、無名のベンチャー企業の多くはいろいろな場面で悲哀を感じているはずです。それが大企業の支援をオフィシャルに受けているとなると後光効果により一気に信用力が増します。(実は大企業の方々はこの辺の価値を実感されにくいと思います。) ③出資 過半の支配権はベンチャー企業側に維持しつつ、将来、出資をしてくれる可能性があれば魅力になります。ポイントは「過半以上のシェアを自分達に維持しつつ」、うるさいことを言われないということです。(まぁ、シェア構成比率だけの問題でもなく、担当者との信頼関係にもよるかとは思います。) ④事業連携・提携 ①~③の複合技でもありますが、具体的な取り組みに発展する可能性があれば、ベンチャー企業の成長は一気に加速する可能性もあります。 ⑤事業売却 EXITを想定しているベンチャー企業であれば、その大企業が事業売却/株式売却先候補として有力であれば、接点を持つ価値は一気にあがります。その場合にはその大企業の期待を意識した事業開発をするのもありです。 いずれにせよ、大企業と組むということは、(場合によっては、)上手く使われてしまう可能性やビジネスの機動性を毀損する可能性があると思います。そのデメリットがあっても上記のメリットがそれらを上回って、はじめて大企業と組むインセンティブが働きます。 大抵ベンチャー企業は常にリソース不足、ビジネスもふらついています。大企業がしかけるイベントに参加しまくっていたり、ニンジンをぶら下げられて何でも飛びつくベンチャー企業もありますが、いいベンチャー企業ほど吟味した上で大企業と付き合います。 したがって、いいベンチャー企業と共創活動をするためには、 A.対等な関係性を築くこと(放っておけば大企業有利になるため、ベンチャー企業を尊重するくらいが適当) B.ベンチャー企業に主導権を持たせ、大企業のルールを持ち込まず、あまり干渉しないこと C.大企業側のトップマネジメントがベンチャー企業との取り組みにコミットして、専門組織(専任人材)を配置すること   特に、ミドルでベンチャー企業との信頼関係を築け、ベンチャー企業と一緒に汗を流せるキーマンがいるとかなりいい感じになります。 ここまで丁寧に座組みを組みつつ、両者とコーディネーターの三者が友好なコミュニケーションをしつつ、繊細に推進していく必要があると思います。

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