01Blog / 僕が会社生活で学んだこと、そしてスタートアップでそれを活かすということ

2016.07.17

十人十色の会社生活だと思います。私もn=1に過ぎません。しかし、会社生活の経験はスタートアップ側に来てとても大きかったと思います。スタートアップ側として会社生活(比較的大手)で学べたことに関してまとめていきます。

会社生活には最大に感謝

仕事柄色々現在の会社組織に苦言を呈する事も多いのですが、実際には会社生活には最高に感謝しております。給料を頂戴して勉強させて頂いているという考え方がありますが、全くAgreeです。会社生活が無ければ今の私は無かったでしょう。本当に感謝しております。01Boosterはベンチャー企業側に加え、大手企業をはじめとした企業の社内へ相当関与しますので、これも一つの恩返しなのかも知れません。

上手く行っている形を知れる

どのような会社組織も「創業」があったと思います。それが様々な形で今に至っていると。会社を離れて思うのは長い間、改善に改善を重ねて至ったものですから、非常に上手く回っているわけです。会社を離れると、如何に企業がしっかりしていたかがわかります。健康保険やら源泉徴収やら、それ以外の経費精算システム、退勤システム、社食やその他、様々な仕組み。良い悪いも言われますが、これらの仕組みもどこかで誰かが会社に実装した時があったはずです。

必ずしも会社で新規事業が興せないわけではない

こう、私は思います。経済が伸びているならば特にですね。やらない方がリスクですから。多少合意に時間はかかりますが、多くの人が一つの目標に向かって努力する結果は素晴らしいものであると思います。

研究開発というものを知る

電機メーカー研究所のでの経験。研究所では、何よりもレポーティングを覚えた気がします。報告書ですね。実施したことを記録として残して行くことは重要です。また、研究結果を持って設計の基準などを創っていくのも大きい。後は、これらの人の「マインド」でしょうか。比較的分野は狭くなりますが、その分野では場合により世界トップになります。ただ、大きな会社では未来予測的な二次データはともかく、エンドユーザや市場などの一次情報からは離れますので、この部分、つまり市場への勘とやっていることの意義付けは少し弱くなるかも知れません。あと、これはその後長く役に立ったのが研究活動は「真理追求」であると思います。これは市場調査や戦略策定としてそれから6-7年後にとても役に立ちました。

産学連携の課題は何か

学会などを通じて産学連携を始めとした取組を実施しました。大学と会社の目線や感覚の違いなど大いに感じたものです。大学と実業の差はあります。更にスタートアップ(実業だけ)と企業の差もあります。この差は大きいと思います。能力云々というよりもそのマインドセットですね。大きく違うのは。

モノという製品を創るということ

電気設計を通じて。私は、設計は多分、最も苦手な仕事だと思えます。なので、1年しかやってません。ただ、製品を実際に作り上げていく工程の「濃さ」はとても学べる事がありました。実際に世に出ますので、実にリアルな感じがしました。

デザインやコンシューマーとB2Bの大きな違い

コンシューマー品というのは面白いです。デザイン一つでこうも印象が変わるのか、機能もありますが、見た目の重要さですね。グッドデザインに入る製品を担当できたのはラッキーだったのと、技術者とは一味も二味も違う、いわゆるクリエイターの方々のマインドも垣間見れました。

海外との仕事を通じての国際感覚

海外製造の経験から、委託会社を含め、海外でのビジネススキームや役割分担をどうやって決めていくかという点、つまり、数社でこういうやり方をしましょうというのを決める方法を学びました。品質クレームでこちら1名、向こう20名、中国の真ん中のあたりというアウエーぶりで、その後に何か度胸がついたわけでもありませんが、良い経験です。また、香港でFar East○○社という名前を見て、それより更に東にある日本という国が世界的に見ればまさに「極東」にあるという、地球儀的感覚を得られたと思います。同時にOEM提供もしておりましたので、顧客のニーズに対し、製造の折り合いをつけていくという事も学んだ気がします。

米国というもの

米国での技術営業を通じて。少し「ハイテク」と言われるものから離れていましたが、米国はやはりハイテクに強いです。当時はまだそこまでGoogleなどのIT系がハードウエアに強い影響を及ぼす時代でも無かったですから比較的通信系が勃興する(スマホ前)の米国の半導体系とのお付き合いは良い経験になったのと、Agenda(打ち合わせの目的と項目)を求められる、つまり、とりあえず会議というのが少ない米国流を覚える事ができました。

地球儀での対応を覚える

世界的な顧客を対応すると、開発拠点も世界に散らばっておりますし、その顧客へのサプライヤーも世界に散らばります。国際的なDMU(Decision Making Unit)探しというのはドラクエをやっているようで面白いです。欧米の方が日本よりも自由なんじゃないか?と思うんですが、思いの外Report to(レポートライン)を守るなど、独特な部分がありますね。

戦略というもの

多分、私の人生の中の最も大きな決断は転職や起業、あるいはプライベートなことでもなく、きっと技術という職種を捨てる事にあったと思います。それぐらい技術というのは周りからみたら分かりませんが、尊いものだったのだと思います。

しかし、他の方は違うかも知れませんが、技術系はビジネスを軽視する傾向があると思うのとその手(ビジネス)の教育が日本は弱いと思います。ここではスタートアップではありませんが、ビジネスを行う上での地図の創り方を学びました。また、自分が過去に才能の無かった研究実務で得た能力(真理追求)をまたここで使うとは思ってもいなかったです。

ハードとソフトの違い

元々は製造系ですから、通信系会社の経験は「モノ作り」と「デジタル」系の違いを知りました。結局、人は自分の経験に引っ張られます。ハード系はハードを中心にどうしても考えますし、ソフト系はまたしかりでしょう。最近出てきているIoTなどの分野はどちらに寄っても厳しいそうです。

結局何を得て、何をスタートアップで使えたのか

一つ、言えますのは、とても会社生活はエキサイティングだったし、最高に楽しかったです。スタートアップの急拡大を映画に例えるのであれば、会社生活はとても面白い長編小説のようなものでしょうか。例えば48時間やSPEEDという名作映画がスタートアップであれば、会社生活は三国志を読んでいるようなものかも知れません。

で、結局、何がスタートアップで使えたかですね。

  • 戦略策定能力は事業を拡大するときの考え方の基本として使えました。
  • IT系事業者の経験は、モノとITという双方の考えの違いをベースに、スタートアップのメンタリングに有効です。比較的、客観的に見れます。
  • 国際系はとにかく、事業規模をどこまで構想できるかに使えます。海外の事業をどうすすめるか(もちろんどうなるかはわからないんですが)をある程度リアルに構想できるかと。
  • 国の「異文化」というもの、それぞれの「正義」があるというのは、特にスタートアップは顧客(多くの場合企業)との文化ギャップが激しいので、この両方をある程度理解できるかと。
  • 大企業にいたので、その良さもスタートアップ側で実感し、安易に若い人に起業を勧めたりもしなくなりますし。
  • 結局、研究所やら電機メーカーを含めて、その重たい変革やベンチャー連携に手を出す気になるのはあの頃の自分を想ってのことだと思います。

結局、今、想えるのは、スタートアップといえども手を変え品を変え、過去の経験を相当活用しているということです。何故、01Boosterでコスト効率も悪く(事業を実際に立ち上げるので時間がかかりコスト効率は非常に悪くなる、投資業に進むと事業と相反する部分があるのであまり行けない)、しかも非常に難しい(企業の社内の変革を伴うのでとにかく重たい)事を自分が実施しているか。

何か、宗教がかった話でもないのですが、ここまで来ると、それは多分、神が決めたもではないか?と想えるのです。誰にも運命があるかと(運命決定論者ではありませんが、結果的に得意なものなど、そういう方向にスタートアップは流れる。何故なら不得手ならばマネタイズできないから)。それがきっと、会社で得たものであり、実際には本当に長い熟慮の上に去ったところに形を変えて戻ってきている事、しかもそこそこのオッサンになって。きっと、これが会社で得たことであり、01Boosterを今やっていることは私にとって天命なんだと想います。

多くの会社経験のある方には必ず、何かの実力が付いていると思います。それを握りしめて、是非、スタートアップの世界に来てください。お待ちしております。

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