01Blog / 文化の出来上がった企業でイノベーティブな新規事業を興すということ

2016.08.28

nanapiの方が「大企業は新規事業に向かない」を書いていました。なかなか面白い内容です。文化ができあがっているところに新しい異分子であるイノベーティブ(別分野・飛び地・ゼロイチ的)な新規事業を行うのはなかなか難しいということですね。

企業文化とサービスの整合性

上記の記事でのポイントは「文化とサービスを整合させる難しさ」というところが大きいですね。どんな企業も創業があるでしょうが、その創業の時点で創ったサービスで文化が創られますが、新事業はそもそもイノベーティブなものであるほど「異文化」ですので、なかなか難しいと。

もう一つはかなり考えて新規事業を立ち上げるというのはあり得るのでしょうが、会議で議論して出てくるようなものは難しい。誰か数名で(かつ「できる」人で)ささっと立ち上げた方が成功確率がかなり高いということですね。

イノベーティブな事業を立ち上げられるか

イノベーティブな事業(Startupが取り組むことの多い)に必要になる要素は「常識を疑う」「権威を疑う」「常に学ぶ」であると思います。

AirBnBの例を考えてみましょう。

  • 最初は数名しか登録がいない
  • 1000日間はサービスが鳴かず飛ばす
  • 法律上の課題もあった
  • 実行していく先にスケールするものを見付けた

これを既にある程度規模のある会社で実施するのは基本的には無理に近いのではないでしょうか。まず2年間うまくいかない。常識的には厳しいと誰もが判定するでしょうし、法律の課題があるのであれば権威の問題もあります。色々試行錯誤でスケールするポイントを見付ける(PDCAを回す)というラーニング(学習)していくというプロセスもあります。

何が原因なのか

上記はよく見るとクリステンセンのイノベーションのジレンマの内容に酷似してますね。個人としてはともかく、既に大きくなって、現状のサービスに最適化されている組織では極めて破壊的イノベーションを達成するのが難しいというものです(下記の5つの原則による)。

  1. 企業は顧客と投資家に資源を依存している。既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先される。
  2. 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない。イノベーションの初期では、市場規模が小さく、大企業にとっては参入の価値がないように見える。
  3. 存在しない市場は分析できない。イノベーションの初期では、不確実性も高く、現存する市場と比較すると、参入の価値がないように見える。
  4. 組織の能力は無能力の決定的要因になる。既存事業を営むための能力が高まることで、異なる事業が行えなくなる。
  5. 技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない。既存技術を高めることと、それに需要があることは関係がない。

クリステンセンの論が100%全ての現象に当てはまるわけではないでしょうが、かなりの部分で真理をついております。もう一つ言えるのは、私も現場で本当に目にするのが下記です。

人や組織は過去の経験に極めて大きく左右される

その人が会計出身であれば会計的な考えをするし、研究所出身であれば研究的など、少なくとも相当の影響を受けます。これは我々のような人がミックスしたベンチャー業界にいるとよくわかります。もう一つが組織です。これも凄い考え方が偏ります。

難しいのは「Unlearning」つまり、過去の自分を忘れることです。

ではどうしたら良いのか

様々な方法はあるのでしょうが。少しイノベーションのジレンマから引用しますと・・

  • 経営陣の強いリーダシップにより会社の主軸を移行させる
  • 小規模の組織(外部・内部であろうが)に任せる(往々にして大組織にとっては顧客のはっきりしないイノベーティブな事業は当初小さく、組織の目標を満たせないので、それを満たせるぐらいの組織に任せる)
  • 評価基準・価値判断を変える(出島を創る)

と、「強いリーダシップで乗り切る(多分、優秀な経営者ほど難しい)」、「何か小さくて文化の異なる、評価基準も異なるような組織で出島で実施する」という大きくは二つに分かれると思われます。前者は確かにAmazonのような会社もありますし、ゼロではありません。ただ、日本は社長の権限が弱いですね・・これでは社長がたいへんかも知れません。

結局のところ、社内なのか、社外なのかはともかく「小組織に出島で」かつコミュニティが強い(考え方が偏っている)ので多様性が必要で、内部者だけでは正直難しく、外部者をその小組織として組み合わせるが日本にあったやり方であると思えます。

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