アクセラレーター・コーポレートアクセラレーターとは何か

2016.11.03

アクセラレーターは日本ではまだ新しい概念です。ここではその形に関してまとめておきます。

ベストアクセラレーター

主にUSになりますがベストアクセラレーターがForbesの「The Best Startup Accelerators Of 2016」に記載されております。何をもってベストか?は難しいのですがSeed Accelerator DBによるとExit(Startupの売却)実績からいうとY-combinator、Angel Pad、Techstarsの順でしょうか。Seed DBの定義ですと。

Seed Accelerator(シードアクセラレーター)に求められるもの
  • オープンに誰でもが応募ができる
  • アクセラレーターは出資を実施(Equityと交換)
  • バッチで実施(五月雨式ではない、ある同じ期間に実施)
  • イベントやメンタリングなどで支援
  • チームに焦点を当てて、個人をサポートするものではない

といったところですね。但し、これらは様々な形式があると思えますので、必ずしも一定のものではないと思えます。

そもそも「アクセラレーター」とは何か?

基本に立ち返って、ハーバード・ビジネス・レビューの「What Startup Accelerators Really Do」Startup Acceleratorの定義が記載されております。

出展:https://hbr.org/2016/03/what-startup-accelerators-really-do

アクセラレーターとは大きくは、誰もが応募可能で、選抜(1%前後:USのトップアクセラレーターの場合)、アクセラレーター運営者を中心としたスタートアップの支援期間(3-6ヶ月)を経て、最後に発表会(Demo Day)という形です。

様々な形のアクセラレーター

例えば有名なY-combinatorは下記に紹介があります。

Y Combinator に学ぶスタートアップ強化プログラム (3 か月間でスタートアップを成長させる Accelerator Program の仕組み ) from Takaaki Umada

多分、この方式はいわゆる「シリコンバレー・サンフランシスコ」だからできるというものでしょう。数を一気に集めて、バッチで実施する形ですね。他のアクセラレーターがコワーキングスペース等を保有しているに対し、これを持たないこと、また、秘密主義という特徴があります。Techstarsが少クラス(最大10-20チーム)でメンター(支援者)を中心で、かつ、シリコンバレーを避けているのでそれぞれに特徴があります。

また、行政が行うものでマレーシア政府のMaGIC AcceleratorやチリのStartup Chileがあります。これらはEquityを取らないで国のスタートアップと海外のチームを混ぜて、自国の底上げや国際的なエコシステムを創ることが目的です。

スタートアップの「過程」に応じたプログラムを提供するTechstars

さて、どちらかというと、Seed Acceleratorは「チームアップしてサービスを立ち上げて少し動きがある」ところが対象だと思えます。なかなかこの非常にスポット的な位置づけにいるスタートアップだけではないですので、前後プログラムを提供している場合もあります。分かりやすい例がTechstarsでしょうか。

出展:http://www.techstars.com/startup-programs/

分かりやすく言うと、まずは起業を喚起するイベントの案内である「Startup Digest」があり、ワークショップの「Startup Weekend」、スタートアップの知見をカンファランス的に1週間で提供する「Startup Week」があって、Preアクセラレーターである「Startup Next」、その後にアクセラレーター、出資(Ventures)という形です。ここまで来るとかなり大掛かりな行政のようなイメージですね。

コーポレートアクセラレーター

コーポレートアクセラレーターの簡単なリストです。世界全部は分かりませんが、Forbesの1月の「Innovation Formats Expand As Corporate Accelerator Launches Peak」によると世界中で116個が運用されているとのことです。この「コーポレートアクセラレーター(Corporate Accelerator)」の定義はSeed Acceletatorを既に出来上がった企業がスポンサードするものです。さて、なんのために企業がこれを実施するかを「Corporate Accelerators: What's In It For The Big Companies?」から拾ってみましょう。大手企業側から見た場合ですが、

  • 最新情報の入手
  • 自社事業側にポートフォリオ製品・サービスの追加
  • 協業やパートナーシップ
  • 社内起業マインドの育成

という点がいわゆる出資以外のリターンになります。スタートアップ側からは大手企業のリソースの活用ができるので、うまく実施すればWin-Winの関係になれそうです(上手くいかない原因をどうするかは「Why Corporate Accelerators Fail — and What to Do About It [Part I]」を)。比較的雇用流動性の高い米国などに比べると、雇用流動性が大手側で低い日本ではカルチャーギャップが最大の問題とはなりそうですね。

スタートアップの事業(企業)価値を上げる(成長を律速する)ことが目的

アクセラレーターの根本に戻ると、その目的は応募してくるスタートアップの企業価値を上げることにあります。分かりやすく言うと下図のようなイメージです。つまり、起業家優先(アントレナーズファースト)ですね。

アクセラレーターは出資を伴っているのでベンチャー企業の成長はリターンと等価です。アクセラレーターの概念は古くからあると思います。近江商人や華僑の方々が有望な若者に事業をやらせて様々な支援をしながら自分たちのエコシステム(利益圏)を拡大したことに似ております。

ハーバード・ビジネス・レビューの「What Startup Accelerators Really Do」に戻ると、アクセラレーターはスタートアップの成長の律速と、地域経済(地域エコシステム)の活性化には寄与がみられるようです。

これに加えて、日本の場合は多くの大手企業が「破壊的イノベーションのジレンマ」状態と思えるので、破壊的イノベーションをもたらすスタートアップの成長を支援することを通じてコーポレートアクセラレーターでは自社の成長に加えて、産業のエコシステムに貢献できるのではないでしょうか。

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