01Blog / 「アリの事例から」非効率・無駄がイノベーションには必要

2017.05.02

働かないアリも集団維持に必要 北大研究者が興味深い研究成果」はイノベーションの文脈で非常に味わい深いです。

アリの研究から見えてきたこと

簡単にいえば、働かないアリがある程度いないとダメということですね。北海道大学のプレスリリースによると、

  • アリのコロニーに存在する働かないアリは,他のアリが疲れて働けないときに仕事を代わりに行う。
  • 普段働かないアリは常に誰かがこなさなければならない仕事を,他のアリが疲れて働けないときにこなす。
  • 従って,組織の長期的存続を確保するためには,短期的効率を下げる一見ムダな働かないアリをある程度確保しておくことが必要になる。 

とあります。なんとも人間社会にも当てはまりそうですね。こちらの記事によると2割は働いていないアリがいますが、それを取り除くと働かない2割が出てくるということですね。

これは、会社組織を考えると確かにパレートの法則の逆バージョンのようですね。面白いですね。「働かないアリに意義がある」を見るに様々な提言があります。日本の基礎研究の大きな課題(日本の科学研究はこの10年間で失速していて、科学界のエリートとしての地位が脅かされていることが、Nature Index 2017日本版から明らかに)にビジネスにおけるフリーライダーの課題、そして、グローバリゼーションにおける大きな問題までに及びます。非常に感慨深い本ですが、ここではイノベーションやスタートアップ、企業の観点から考えてみます。

イノベーションの文脈で考えてみる

アリがある経路を多数が通っている場合、一部のアリがその、隊列を離れてフラフラしますが、このアリが最短距離を「偶然」発見して「イノベーション」を興すというのは有名な話かもしれませんね。つまり、短期的な合理性の追求(この場合、隊列を離れるアリを罰するとか)長期的な非合理(長い経路を通り続ける:逆も然り)というパラドクスがあることですね。これはビジネスをする上で、合理性の追求が結果的に悪い(全体最適化と部分最適化の頃合い)結果をもたらすというものです。スタートアップは一見、非合理的な活動をすることもうなずけます。

合理性を追求すると、長期的な非合理につながる。合理性はイノベーションを駆逐する。

反応閾値

これも面白い議論です。簡単にいえば、汚い部屋があったら、人によって掃除を始める汚さの度合いにバラツキがあって、結果的に、集団では、誰かが疲れたら(閾値の高い人が)、それを補う集団(閾値が低くて、何もしてなかった人)がいて、集団の生存自体を長くするという文脈です。つまり、全員が一丸(同じ負荷で突っ走る)としてしまうと、最終的に負けてしまうというものですね。これは面白い。

スタートアップや会社ではどうなのか

ここでは、働かないアリ、というよりは、別に話のある「フリーライダー」的に参考になります(生物学ではチーターと言うようですが)。社会ができて、社会コストがあると、そこに只乗りする人は、生物の世界でも出てくるとうことです。問題はチーターが増えると「その集団( ≒ スタートアップや会社)」は極論、潰れてしまうので、人間の社会ではチーターを取り除くように法律やら規則で縛るわけですね(例えば泥棒もチーター)。スタートアップは規模が小さくて弱いので、より深刻ということで、フリーライダーが困るわけですね。「ビジネス成功のための十訓に学ぶ起業成功の要素」の「7」にスタッフの交換の話があります。「スタートアップで内部紛争はもれなく起こるもの」にもあるようにスタートアップではフリーライダーの問題もありますが、内部紛争の方が問題になります。フリーライダーは最初の「働かないアリ(予備軍)」とは違う概念です。

では、フリーライダーの存在意義はなんなのか?という気がします。多分、大企業では、マクロで見ればその会社自身の衰退を通じての新陳代謝のため(当然コスト構造は悪くなるので)、か弱いスタートアップにとってはかなり深刻な話なので、なんとしても対処が必要。そのスタートアップの存続や経営手腕そのものがビジネスの神に試されるための必要悪なのかも知れませんね。「正しい野心」のことを思い出します。

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