社内を活性化したければ、別領域のスタートアップを買収せよ

2018.03.13

こちらは2/5記事目になります。

「現在の延長線上にはない未来を考える」加藤順彦氏が語る、事業創造0→1とは vol.1

社内を活性化したければ、別領域のスタートアップを買収せよ vol.2

スタートアップする時は、まずメガトレンドを見るべし vol.3

国内のスタートアップ環境は、過去50年で最高 vol.4

加藤 僕は、穐田さん体制になったときからお辞めになる1年くらい前まで、クックパッドで、広告事業部のお手伝いをしていたんですね。

 

  あ、そうなんですか。知らなかったです。

 

加藤 そうなんですよ。穐田誉輝さんは、一昨年色んなことがあっておめになって、今は違う会社の代表をされていますけど、クックパッド在任中2012年から2015年までに、今の規模までぐいぐい伸びたんです。内訳としては、本業レシピの有料会員の人数増と広告売り上げ増が伸びしろの大半でした。

 

   その穐田さんが社長をやっている間、かたやクックパッドとほぼ関係のないスタートアップをいくつも買収・起業しているんです。サイタ、レター、アンジュ、ホリデイ...。そもそも穐田さんは、なぜそれらの事業を買収・起業したのか。

 

   会社というのはやっぱり経営者次第、経営者の思う通りにしかならないうんです。穐田さんのように、無関係の会社を引きずり込んでくることも企図のあるケミストリー誘発だと思うし、朝倉さんのように会社を劇的に変えるには、本業うんぬんって足枷を取り払い、利益が出そうな商売は持ち込企画でも何でも挑戦するんだってのもそう。

 

   新体制となったミクシィはモンストだけ取り組んだわけじゃないんですよ。沢山やった中で、モンストが飛び抜けたから他を止めて、ほぼモンスト専門になった。最初からソーシャルゲームに絞っていた訳でもないんです。一時期は利益の95%がモンストのみと。それくらい大きなポーションにまで成長したんですね。


    正解はないでしょう。いま僕がしゃべっていることも、モンストやクックパッドの事例が正しいという話しじゃないんです。ただ、アクセラレータープログラムとか、大企業とスタートアップのコラボレーションというと、どうしても大企業側が元々持っている業務領域とかリソースとの掛け算みたいな話に終止してしまうことが多いので、そこに関してどう考えるかというのは、結構大事なポイントだなと思っています。

  


  ありがとうございます。ゼロワンでも、その領域はとても大事なテーマです。既存領域との掛け算が、まさにどの企業でも議論の焦点になっていますね。

 

加藤 今まで僕の見てきたところで言うと、無関係のところから芽が出ることも多いので、それを全部省いてしまうのは勿体無いと思うんですね。

 

  先ほどのクックパッドさんの例でも、本業との事業シナジーがわかりやすくあるとは言えないけれども、人と人とのケミストリーはものすごく起きていたという状況だったのでしょうね。

 

加藤 そうですね。若い人、若い起業家をどんどん社内に取り込んで、それを社内で「放牧」する。そうすることによって、新卒で入ってきた人とか、既存社員に刺激を与える効果はあったというのを、僕は見ていました。

 

   本業が新たに取り入れたことは、レシピのデータベース化や、野菜のEC流通、小売店の特売情報の配信などだったんですけれど、そういう人たちを巻き込んでいったことによって、社内が活性化したようにみえました。

 

   でも、それがどう業績に表れたのかというのは、うまく数値化することはしい。なぜ本業と関係の無い会社を沢山買収・起業し、それを社内にいたのかというのは、あまり合理的な説明はつかないんですよね。

 

  確かにその辺りの効果は、中々指標化するのは難しいですね。

 

加藤 スタートアップを買収することによって、社内を活性化させる。しかも、それは本業とは関係ない領域。2012年から2015年のクックパッドというのは、まさにそんな良いケミストリーのある文化が生まれていたといます。


スタートアップ企業は、何も持っていないからこそチャレンジができる

 

加藤 そういえば、今日は何の話をしましょうか。つい話し始めてしまいました(笑)。

 

  そうですね(笑)。

 

加藤 全然インタビューになっていないですけれど、せっかくアクセラレータープログラムの話になったので。自分が考えていたことは、おそらく皆さんにも繋がるお話だと思いまして。

 

  興味深いお話だと思います。加藤さんは、色々な会社で経営・組織創りをされていて、シード期のスタートップに対しても、投資後にボードメンバーとしてハンズオン支援されていらっしゃいますよね。

 

   そういった多様な事業創造に携わっていらっしゃる加藤さんのお話は、読者の皆さんも大変関心のある内容だと思います。

 

加藤 ありがとうございます。大企業の新規事業創造の現状を見ると、なんか勿体無いなと僕は思うわけですよ。

 

      先ほどのミクシィの話で言うと、時価総額200億円切っても、現預金130億円あるんだったら、今やっている事業の価値なんかは考える必要なかったって事例。おカネがそれだけあるんだったら、色々なチャレンジができる訳じゃないですか。シード期のスタートアップからすると、羨ましい限りだと思いますよ。

 

      今後イケる領域で、ハッキリしていることあるじゃないですか。例えば、高齢化産業や、日本だとインバウンドとかね。もう絶対にイケる訳ですよ。間違いなく鉄板。

 

      であるならば、「いや、うちの会社は精密機器の会社なんで」「うちの会社は今3代目なんで」とか本当は関係ないですよ。イケてる事業領域があったら、そこに投資したほうが合理的とも言える

 

      でも重たい大企業はそれが出来ない、だからスタートアップに負けるんですよ。スタートアップは何も持っていないので、イケてることだけをやればいいですからね。


  スタートアップによる逆転劇ですね。

 

加藤 誰がどう考えても、高齢化産業やインバウンドがイケてることは、もうわかっていることですからね。もうマーケットが大きくなるのは見えている。

 

   皆んなでかき集めても150万円くらいしかないベンチャーと、例えば現預金が100億円ある大企業。でも本業とシナジーがないからってやらない大企業。150万円しかないけど全力でやるベンチャー。

 

   もし同じ高齢化産業、同じインバウンドでチャレンジした場合、どちらに勝ち目あるかというと、ふつうは大企業ですよ。でもやらないでしょ。それはなぜ?本業とシナジーがないから。

 

   「え、なぜやらないんでしたっけ?」と僕は思うわけですよ。だから、大企業の新規事業開発の担当者の人は、その呪縛を取り払ったほうが絶対面白くなると思います。

 

   01って「ない」ところから「ある」を創ることなんです。そこに「うちが元々やっている事業はこれですから」「そのシナジーを使って」という、その発想が無用だと思うんですよね。それは01じゃなくて、110の話なんですよ。

 

   じゃあなぜ、0から1にできるかというと、そこにマーケットがあるからなんですよ。えばインバウンドや高齢化産業ね。

 

   だから今の事業と何の関係もなくても、絶対大きくなるんだったら、手元に現預金100億円もあるんだったら、そっちに張ればいいかもというのが僕からのげかけです。あ、これ銀行は反対しますけどね。()


未来がある事業領域は、先ず挑戦するべし

 

  9割以上の大企業が、01できていないですね。

 

加藤 そっちが本当は01ですよね。01の意味を言えって言われたら、何もないところから1を創ることだって誰もがわかっていますよ。

 

   イケてるところに投下する。祖業本業もシナジーゼロでも、その事業領域に勝ち目が見えるなら先ずやってみる。

 

   でも「うちにはインバウンドやる人いないんですよ」という返事が返ってくる。いや、そんなのやりたいヒトいるから。はなからしてない、ってないでしょ。

 

   あまり祖業・本業みたいなことに縛られちゃうと、謎の掛け算が生まれる。片方1割ってる掛け算だったら、要するに掛けると減るじゃないですか。0コンマに掛け算しても、数字減らしちゃうだけで、逆に領域をめちゃうんですよ。

 

   だったら掛け算しないで「高齢化産業イケてるよね」とそぞろ走ってみるほうが結果もくでる。取り組むことをめてから、社内振り返って見渡して、使えるリソースを探したほうが、かえって諸々出てきたりする

 

   そこをはき違えている人が多いです。アクセラレータープログラムに関してもすごくそう思っていて。大企業側の事業リソースを無理矢理掛けても、実際には事業創造に繋がらないことが

 

   今やっていることに縛られると、結局何も生まれないことが多いですよね。

 

加藤 そうそう、そこに縛られているのが勿体無い。

 

   逆に大企業が、そこを振り切ってヒトとカネを、そういった領域に最大限費やすことになれば、スタートアップとしては太刀打ちできない。

 

加藤 ですよね。でもそういった事例は少ないです。すごく少ないですけど、ゼロではないですよね。

 

   「この後、絶対大きくなる産業はどこだっけ?」と、考えられると良いです。大きくなることは決まっていて、まだ全然プレーヤーが足りないんだったら、僕は単純に今の本業とか祖業とは無関係にやればいいと思っています。

 

   プレーヤーの需要と供給のバランスを見て、足りない状況だったらどんどんチャレンジする。そういったマーケットに対しての感度は、常に高めておかないといけないですね。

 

 こちらは2/5記事目になります。
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国内のスタートアップ環境は、過去50年で最高 vol.4
後悔しない、人生の岐路に立ったときの考え方 vol.5

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