国内のスタートアップ環境は、過去50年で最高

2018.03.15

こちらは4/5記事目になります。
「現在の延長線上にはない未来を考える」加藤順彦氏が語る、事業創造0→1とは vol.1
社内を活性化したければ、別領域のスタートアップを買収せよ vol.2
スタートアップする時は、まずメガトレンドを見るべし vol.3
国内のスタートアップ環境は、過去50年で最高 vol.4
後悔しない、人生の岐路に立ったときの考え方 vol.5


  今年以降、アジアに展開しようという企業はいかがですか。

 

加藤 消費材に関してはまだ遅くないと思っています。もちろん個別戦略というところで、色々検証してみる必要がありますけれども。ものづくりの地産地消が進むので、日本でイケてるものを東南アジアで製造拠点を作って、直接売っていく。

 

   人口の多い国ですね。タイはもう成熟化が進んでいるんで、競争が厳しいです。まだ椅子が空いているとじるのは、フィリピンやベトナム、インドネシア。モノ売りや、IT・サービスに関しては、パートナーを間違えなければまだマーケットがあると思っています。

 

   アプリもそうですし、IT・サービスもそうですね。いま中国や日本でえているものはアリだと思います。競争が厳しそうなのは、この後本格的に立ち上がってくるインドですよね。口が狭い感。

 

   孫正義さんの動きを見ていると、もう日本の資本とかに全然期待していないですよね。だからインド資本に直接お金を溶かしていっています。孫さんは、もうインドはインド人じゃないと勝てない、中国と同じような状況になるんじゃないかという風に思っているじゃないか、と。正しいと思いますね。

 


   国内のスタートアップ界隈について少し伺いたいのですが、シンガポールから見て、どのように見えますか。きっと日本の投資家とはまた違った視点で、日本のスタートアップ、起業家を見られていると思いますが。

 

加藤 環境良くなっていると思います。僕がシンガポールに出て行った時よりも、遥かに資金調達しやすくなっていますし、それこそIVSICCB Dashさんなど、お金を調達する環境というのはすごく良くなっていますよね。

 

  私が起業した2011年の頃と比べても、かなり国内の環境が変わってきていると感じます。資金巡りや起業家コミュニティ、そしてそれに対しての情報の流動性は、だいぶ良くなっている実感がありますね。

 

加藤 そうですよね。世の中のスタートアップを取り巻くムードというのも、この10年でかなり変わったので、学生で起業したり、あるいは学生でありながら企業を大きくして企業に売却したりするのも、1020年前では考えられないくらいに、状況は進化していると思います。

 

   若い人は、どんどん挑戦したほうが良いと思う。日本のスタートアップの状況は、過去50年で最高といえる状況で、企画書だけで5,000万円、1億円と普通に調達できる状況に今なっています。199899年のいわゆるビットバレーの頃に状況は近いですよね。あの頃よりリテラシーは数倍進化していますが。


国内スタートアップの海外展開への難しさ

  日本のスタートアップは、海外展開がなかなか上手くいっていない現状がありますが、この点はいかがですか。

 

加藤 なかなか難しいんですよ。

 

   日本のスタートアップ、アジアもそうですけれど、特にアメリカへの展開は難しいですよね。国内のスタートアップが、海外展開するためにはどのような戦略や手段が必要だと思いますか。

 

加藤 いま僕は、シンガポールのAdAsia(アドアジア)さんなどは注目しています。アドアジアさんは、徹底して現地化戦略です。

 

    インドネシアならインドネシアのチーム、フィリピンはフィリピンのチーム、ベトナムはベトナムのチーム、自分たちのメソッドをもっていき、現地で雇用したイケてる人たちにしっかりオペレーションさせていくというのがキーになっています。

 

   東南アジアの1つの特徴として、11人種1言語1宗教というのがありますね。みんな言語や人種や宗教が違う。

 

   じて、中国、華人とどう向き合っているか、日本人とか韓国人、台湾人というのは、中国の資本に対してどのようなポジショニングであるのか、みたいなところを結構問われるケース多いかな。いかに手を組んで、どのように広げて、イグジットを描くのか。

 

   ポイントはやっぱり現地化。いかに現地の人たちと役割分担して物事を進めていくかですよ。子会社、出張所のような考え方で、現地法人の社長・幹部は全員日本人で、下だけ現地の人というのは、スタートアップの世界でも難しいですね。

 

   今加藤さんは、何社くらいに出資されていますか。

 

加藤 現在進行形でやっているのは、20社ちょいですね。

 

  以前お聞きした際、投資する起業家の基準として、人の良さ、人の正しさという観点がありましたよね。その人の正しさを見極めるというのは、すごく難しい部分があると思いますが、加藤さんなりに起業家を見る時に、具体的にどこを見てそれを見極めていますか。

 

加藤 倫理観ですね。何がその人の正義か、なぜ事業をするのか、その事業が上手くいった場合、どんな果実を社会に提供しようとしているのか。そういうところはますね。

 

   僕がお金を出してそれが上手くいったら、そのお金を何に遣いたいのかは気になるんですよね。お金の遣い道。

 

  確かに、お金の遣い方に人の価値観は表れますね。

 

加藤 そうなんですよ、すごく感じます。結局利益は、価値を認めてくれているから上がるんですよ。

 

   原価10円のモノを50円で売るとするじゃないですか。すると自分の作った価値は40円です。この40円は、自分の成果ですよね。起業家が、それをどう遣うのかというところを、お金を出してくれた人=出資者は見ていると思うんですよね。

 

   だから社長にしかできないことって、稼ぐことではなく、お金を遣うことなんですよ。お金を稼ぐことは社員でも出来ます。社長は遣い道を決めるのが仕事です。どう遣うかが貴方の真価だってよく言っています。人間の生き様は、遣い道に表れるんです。


経営者の生き様が表れる、お金の遣い道

加藤 僕は、1年の4割ほどは投資先のお金集めをやっています。地味です。アポイントとって、社長と一緒に行って、お金出してほしいと、そればかり。何年もスタートアップの資金集めをやっています。

 

   投資家は、投資検討において遣い道に関心があるんです投資して頂いたお金を死に銭じゃない、生きた金にする。それが真価=企業価値向上に繋がる。そこに経営者の生き様が出てくる。

 

   参画先の社長と資金調達活動を年中していますけど、その行き帰りの車内、あるいは電車の中、あるいは夜の反省会で、「いま一生懸命お金集めているけどさ、これってどのように遣うんだっけ?」とよく計画を確認しています。

 

  今のお考えは、いつ頃から加藤さんの中で芽生えましたか。初めて創業されたときか、もしくはそれ以前でしょうか。

 

加藤 僕は、学生時代からダイヤルキューネットワークやリョーマがダメになったりと、会社がダメになるのを当事者として何度も、その瞬間を見てきました。

 

   「なぜ事業は、ダメになることがあるのかな」と突き詰めて考えると、やっぱりお金の遣い方をしくじってるんじゃないかな、という結論になっちゃう。撤退、投資の実行、お金を正しく遣うとか、そういうのはトップしかできないんですよね。

 

   だから、僕はどの参画先も社長としかコミュニケーションしないことにしています。社員は、みんなお金を稼ぐのが担当。そして社長はいかに遣うか。いかに生き銭として、世の中にはたいていくのかは、君の仕事だって。

 

   そこを上手出来ないと、お金の回りが悪くなりますよね。さっきも言いましたように、お金を払ってくれる人は、当然利益が出ていることを知っているわけですよ。10円で仕入れたモノを30円で売っているのか50円で売っているのか、それは買ってくれた人は知らないですよ。でも10円のモノを6円で売っていると思わないわけです。

 

   例えば、僕が辻さんにお金を払う時に、当然利益を乗せているなと思うわけですよ。それは原価とは関係なく、ただ僕は辻さんにお金を渡すと。そこの期待値に応えられているかってところが、商売が左前になるかってところの分水嶺になると思っています。そして応えられなかったら、やっぱり続かないんですよ、関係性が。

 

 上手くいく会社は、顧客満足度が高い


加藤 ベンチャーの世界に32年いて、ダメになっていくのも上手きてく会社無数に見ていて、上手くいく会社の共通のポイントは、顧客の満足度が高いんですよ。高いところはやっぱり続くんですよ。当たり前ですよね。満足度が低い商売というのは、結局続かない。

 

   だから顧客満足度はとても大事。言い換えると「甲斐」ですよ、遣い甲斐があるかないか。それが満足度になるんです。

 

   1000円なら1000円、10万円なら10万円払った甲斐があるかないか。常に思うのは、そこが続かないところはやっぱりダメです。

 

     いつも参画先の社長に、「とにかくお金は遣い甲斐が大事だよ」と。会社の中で、ある意味お金をバンバン、自分の気持ちで沢山遣える人ってそんなにいないんですよ。どんな会社も、最後決断はトップだけです。会社のメンバーを代表して遣っているわけじゃないですか。ここの場所にいくら家賃を払うとか。

 

  事業投資、社員の給料など全てそうですね。

 

加藤 そう、トップですよね。どこに生き金として遣うのかってところを、はやっぱり見ます。だからそこに共感できないと、出資はできないですね。


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