大手企業とスタートアップのアクセラレーターを運用していると、思うことです。
オープンイノベーションの良い本
「会社は何度でも甦る ビジネス・エコシステムを循環させた大企業たち」はオープンイノベーションの現状(主にUSの例ですので、大型組織で起こる共通なことと、日本を始めとしたアジア文化圏の場合で異なること、例えば人材の流動性など、は考慮する必要がありますが)をよく表していると思います。
ただし、日本語題よりも、元の英語題の方が参考になりますね。「Unleashing the Innovators: How Mature Companies Find New Life with Startups」つまり下記です。
イノベーシターの解放、成熟企業がどうやって新しい人生をStartupと共に見つけていくか
文化維新が重要
「社内起業の社会的な価値はなんなのか?」にもまとめましたが、成熟企業ではどうやってその文化を変化に対応させるか?が仕組み以前に重要だと思います。上記の本では、この話が書いてあります。日本で我々も実際に企業文化がスタートアップに影響を受けて変わっていくところは目にしております(森永製菓の新規事業担当がもがいた4年間--ベンチャーとの「絶望的な差」とは)。
スタートアップファーストなのか?
一般的に「スタートアップファースト」というのが世界ではいわれております。これはもちろん理解できて、大手企業と比較してスタートアップは弱いですから「普通に対峙すると下請け扱いになってしまうので」ということです。これは世界的にみられます(特にアジアはその傾向が強いかも知れませんが、欧米でも普通にいわれます)。また、巨大なIT企業ではあれば、結果的に自分たちが「孫悟空と釈迦」のように買収するので、スタートアップが最も動きやすい状態(Equityもとらないで完全支援だけ)のスタートアップファーストであるほど良いという現象もあるでしょう。
しかし、そうなのかな?と思っております。
エコシステムファーストではないか
最近、思っているのは、大手企業でもない、スタートアップでもない、関係者全体、社会全体の利益(この場合、必ずしも金銭的なものだけではない)を最大化する、社会関係資本や全体の生態系「エコシステム」ファーストという考え方が良いのではないか?と思っております。
スタートアップ側からみると、成熟企業は批判するのが容易です。動きが遅い、組織が硬直化しているなど、様々なツッコミどころがあり、特にリスクを取っている起業家にとってはその傾向は強まるでしょう。
先日、欧米の大手のアクセラレーターの方と話していた時に、この点に気づきました。欧米の大手でも成熟企業は同じように批判の的になるのです。ただ、違和感がありました。
特に英米のように役割分担が比較的はっきりしているところでは、イノベーション(ゼロからイチ)はスタートアップ、オペレーション(スケールアップ)は大手企業という考え方も成り立つかも知れません。しかし、その米国でも冒頭にあげた本の通り、様々に成熟起業も過去と戦っているのです。
これを発展させると、日本を始めとした家族型・集団型のアジアでは、大手企業とスタートアップを総体とした「エコシステムファースト」という考え方が文化的に合うと思えるのです。