01Blog / 日本はドイツ地域にもっとオープンイノベーションを学ぶべき

2017.05.24

シリコンバレーが凄いのは良くわかりますし、参考にもなります。一方で全米起業部門1位のバブソンのような大学も米国にあります(より中小企業や家族経営にフォーカス、なぜなら世界の殆どはそっちなので)。ハイテク起業であれば100億円からスタートするような場合もあるようなシリコンバレーは素晴らしいかも知れませんが、真似が難しく、そこを模倣するならどうしても日本ではその劣化版になってしまうと思います。日本の文化に根ざした取組が必要です。今回のドイツ(Dusseldorf)訪問を経て、日本はこのドイツ地域からもっと学ぶべきだと感じます。

アーヘン工科大学近傍のdigitalHUBアーヘンのRob氏は近傍のオランダから来ていて、オランダの状況もお教え願いました。「なぜ社内の“エース級人材”では新規事業が生まれないのか」に記載した通り、大手企業内(ドイツでは大型の中堅企業も含め)の状況はオランダでもドイツでもたいして日本とは変わらないところです。同じことをやっていると発想が閉じてしまうとのこと。問題はそこからですね。スタートアップ的な考え方や社内起業、スタートアップとのデジタル系の連携などを行っています。

アーヘン工科大学は非常に大きな大学です(下写真は大学病院、見た目工場のようですね)。非常に産学連携が盛んです。大学よりも民間に近い研究機関であるフラウンフォーファは有名ですね。いくつかの点で日本と違います。

  • (文学などの伝統的なところを多分除いて)大学の教授は多くの場合、2つの名刺を持っており、ビジネスをやっている。
  • 同じ大学でそのままその大学で教授になる可能性は低い。異動する。
  • 様々な会社の役員を教授がやっている。
  • フラウンフォーファを含め、人の移動は盛ん。
  • 国プロ系の研究では「必ず」EU域内に登記を持つ「他国」の企業を入れないとならない。

かなり強制的・習慣的に人の流動性を高めていますね。また、大手も研究は外に出すのが当たり前(厳密にコストの問題で判断)であり、契約で守られるので、その分野の先端の人が幾つもの会社の仕事を行うなど、なかなかのものです。

ケルンやDusseldorfにあるSTARTPLATZ(アクセラレーター・コワーキング)は中小企業から中堅企業、スタートアップのイノベーション型新規事業の支援(スタートアップのやり方を伝える)も行っております(奥の方によく見たビジネスモデルキャンパスが!?)。Dusseldorf(ドイツ自体も)もそこまで起業が盛んではありません。その中で、ハードウエア製造業中心ななかで、デジタル化と市場の動きが早くて、かつ、世界的に成長の伸びが鈍化したので、イノベーションという文脈が重要になっているというのは日本と変わらず、下記の施策が基本的に打たれております。

  • スタートアップ型(逸脱型イノベーションや手法・マインドセット)の考え方・やり方の中小から大手までへのインプット
  • 製造業のデジタル化とSDL
  • スタートアップを含めた多種な「チーム」での事業開発(オープンイノベーションの追求)

ここで、個人的な仮説ですが、企業が密集する(Dusseldolfは特に)ところでは、現在の大きな企業体でデジタル化やイノベーションをやるのは無理があるので、スタートアップが重要になり、その連携も重要になります。簡単にいえば・・

B2Bのスピンオフ・スピンアウト型のスタートアップが企業までを含めたイノベーションの鍵で、かつ、そのようなスタートアップが大手企業と連携できるかどうかが将来の産業の勝敗を分ける

ということです。実際に「日本デー」ではそのような流れをドイツが推奨しており、これは先に書いたオランダでも同じ、実際にそのようなスピンオフ・スピンアウト型のスタートアップが10−20倍程度にここ数年でかなり増えているようです。

下の写真はioXlabです。簡単にデジタル化したハードウエアを創れるサービスですが、基本的に大手から受注しています。典型的スピンアウト型ですね。

問題はここからですね。日本でもドイツでも状況は似ているしやっていることも似ているが、要は、それを「実のある活動にできるか?」というところだと思います。例えば、スピンオフしたチームをコントロールしようとしたり(この点は「日本デー」で鉄鋼会社からスピンオフした人と色々話しましたが、元の会社が家族経営で理解があってしっかり自由度があったとのこと)、Dusseldorfではあまりないようですが、個人対個人なので、会社対会社とならず、特にスタートアップや起業家の地位が日本ほどには低いわけでもないなど、Dusseldorfが進んでいるとも思いませんでしたが、今後、実効性・有効性の部分で日本は極めて大きな差を付けられるように感じました。

ドイツの全てが完璧ではないでしょうし、問題もあるでしょうが、我々は今後の産業変化の中で多大な変化を興す必要があり、その模範はドイツにあるようにも感じた次第です。

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